Knowledge Integration through Detecting Signals by Assessing/Scanning the Horizon for Innovation

養殖魚の餌料や家畜飼料として注目される昆虫

世界漁業・養殖業白書よれば、養殖魚の生産は増加し、2030年までには食用魚の62%が養殖魚となると予測されています1)。餌料の主原料である魚粉の需要は増大しており、その国際価格は高い水準で推移しています。魚粉の大半を輸入に頼っている我が国では、魚粉価格はコストに大きく反映されます。そこで、魚粉以外のタンパク質を用いた配合飼料の開発がすすめられています。

昔から観賞魚の餌料として使用されてきたイエバエは、短期間で成育し、必要な水や飼料も少なく、安定生産が可能であるとして注目されています。山梨県水産試験場の報告では、イエバエサナギの摂取によりニシキゴイ稚魚の成長が促進されました2)。愛媛大学の三浦猛教授のグループによれば、イエバエサナギを含む餌料を与えたマダイでは、成長速度が高まっただけでなく抗病性も向上しました3)。三浦教授は、この成果を社会に還元するため、JST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)を活用してベンチャー企業を設立しました。

農業分野においては、昆虫由来成分を含む肥料がすでに世界各国で販売されています。また、未販売食品を飼料にして繁殖させたアメリカミズアブの養鶏飼料への使用が2016年にカナダ食品検査庁(CFIA)によって認可されました

食料としても注目

日本では昔からイナゴやハチノコを食べる習慣があり、アジア他多くの地域にも昆虫を食べる文化があります。2013年、FAO(国連食糧農業機関)が“Edible insects -Future prospects for food and feed security” と題する報告書4)で、将来の食料としての昆虫の重要性を指摘して以来、昆虫食の習慣がほとんどなかった地域においても食品として昆虫への関心が高まっており、例えばフランスでは昆虫の粉末入りのパスタが販売されています。国内では、徳島大学の三戸太郎准教授と渡辺崇人助教が食用フタホシコオロギの大規模・自動飼育の研究費用をクラウドファンディングから調達しています。

FAO報告書 "Edible insects -Future prospects for food and feed security"

さまざまな化合物の生産手段として

カイコからは生糸だけでなく、化粧品やコンタクトレンズなどに使用できる様々な成分を得ることができます。これに加えて、光ったりクモの糸の成分を含む非常に丈夫な生糸など、新たな価値をもつ素材を生産する研究も進んでいます。また、昆虫の触覚センサの研究や、昆虫の翅をデバイスの素材として用いる試み5)も始まっています。

新産業の創出にむけて

昆虫は、大昔から食料、染料、糸、装飾品などさまざまな用途に利用されてきた一方で、家屋を食い荒らし、伝染病の蔓延や農作物への被害をもたらすやっかいな存在でもあります。昆虫に対する研究および成果の実用化にあたっては、安全性の検討はもとより、現在と将来の環境影響に対する十分な配慮が必要であるとともに、その製品の普及には価格競争力も求められます。

参考

  1. 国連食糧農業機関, 世界漁業・養殖業白書2014年(日本語版概要) http://www.fao.org/3/a-i3720o.pdf
  2. 芦沢晃彦・坪井潤一・青柳敏裕・岡崎巧・高橋一孝, イエバエサナギによるニシキゴイ稚魚の成長促進効果 山梨県水産技術センター事業報告書 41:14-18,2014. http://www.pref.yamanashi.jp/suisan-gjt/documents/...
  3. 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP成果集 科学技術振興機構 2016.https://www.jst.go.jp/a-step/seika/pdf/a-step-seik...
  4. Food and Agriculture Organization of the United Nations, “Edible insects: future prospects for food and feed security”, 2013. http://www.fao.org/docrep/018/i3253e/i3253e.pdf
  5. 棚橋一郎:昆虫の翅を基盤に用いたものづくり.応用物理 85(8):721-724,2016

関連するデルファイ課題


コメント欄を読み込み中