Knowledge Integration through Detecting Signals by Assessing/Scanning the Horizon for Innovation

建物のエネルギー消費の低減に向けて

米国エネルギー省(DOE)は、建物のエネルギー消費を2020年までに20%、さらに長期目標として50%の削減を目指しています。住宅や商業ビルなどの建物のエネルギー消費の50%以上を室内の照明と温度コントロールが占めており、その対策が求められています1)

“透明な木材”の開発~新しい省エネ窓材料の可能性

2016年4月、スウェーデン王立工科大学の研究グループは、「透明な木材」を開発しました。木材のリグニンという遮光成分を化学的に取り除き、導管として機能するセルロースと屈折率が同等の透明樹脂を注入し作製しています2)。さらに同年8月、米国メリーランド大学エネルギー研究センターの研究グループは、同様の方法で作製した透明な木材を、建物の窓(屋根)材料としていくつかの特性を評価しました1),3)。その結果、透過率は85%以上(0.5mm厚)でガラスより劣るものの、木材の成長方向に沿った導光の異方性に起因する散乱効果により、室内などの閉鎖空間に均一に光を照射できることがわかりました。さらに、熱伝導率はガラスの1/3と低く断熱効果が高いこと、繊維構造を保つため耐衝撃性も高いことを実証しています。

図表 “透明な木材を用いたモデルハウスの例4)


透明性木質素材の応用研究の拡大

実際の建物への適用では、紫外線耐性など多岐にわたる耐候性や製造面での低コスト化が要求されますが、今後、自然素材である木材の特性を活かした省エネ材料としての応用展開が期待されます。また、木材の繊維成分を取り出したセルロースナノファイバーを束ね加工したフィルムやシートの研究開発も進められており、透明ながら耐久性や断熱性が高い特性をもつ木材の応用が注目されています5)


参考文献

  1. L. Hu et. al.; “Wood Composite as an Energy Efficient Building Material: Guided Sunlight Transmittance and Effective Thermal Insulation”, Adv. Energy Mater., 1601122 (2016). (DOI/10.1002/aenm.201601122)
  2. L. Berglund et. al., “Optically Transparent Wood from a Nanoporous Cellulosic Template: Combining Functional and Structural Performance”, Biomacromolecules, 17, 1358(2016). (DOI/10.1021/acs.biomac.6b00145)
  3. L. Hu et. al.; “Highly Anisotropic, Highly Transparent Wood Composites”, Adv. Mater., 28, 5181(2016). (DOI: 10.1002/adma.201600427)
  4. メリーランド大学HP, UMD RIGHT NOW; https://www.umdrightnow.umd.edu/news/wood-windows-...
  5. ナノセルロースフォーラム; https://unit.aist.go.jp/rpd-mc/ncf/index.html


参考

  • 藤本博也、「住宅の省エネルギー化に貢献する高断熱技術」、科学技術動向、p19(2008年12月)


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