Knowledge Integration through Detecting Signals by Assessing/Scanning the Horizon for Innovation

フィンランドの企業支援

フィンランドでは、スタートアップと投資家を結びつけるSlushというイベントが年々活気を帯びており、2017年3月に東京で開催されたSlushも盛況でした。Slushは学生が中心となって運営しています。

さて、フィンランド政府は、スタートアップも巻き込み、未来を見据えた大きなプロジェクトを推進し、他国の企業も引き付けています。今回は、船舶無人運航システムのプロジェクトを例に取り、フィンランド政府が、いかに自国の持つリソースの活用を促進し、未来戦略を築いているかを紹介します。

自律無人船舶の開発

近年、船舶無人運航システムの開発が進んでいます。EUでは、研究開発支援ファンドの枠組FP7(The 7th Framework Programme )を受け、2012年から、研究機関、企業、大学が共同で、MUNIN(Maritime Unmanned Navigation through Intelligence in Networks)プロジェクトを開始しました2

また米国では、国防総省内のDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency)が、潜水艦の追跡等を目的にした高度なセンサーやレーダーを搭載した船舶無人運航システムの実証実験を進めており、2018年には海軍にこのプログラムを移管する予定でいます

日本においては、無人運航は、これまでボートサイズのものに限られ、探査機として海底地形調査、資源調査、放射能の測定などの開発・運用が進められてきました。船舶無人運航システムについては、海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology ,JAMSTEC)が、国土交通省の許可を得て運用試験を開始しています。

こうした中、世界に先駆けて自律無人船舶の商用化に向けた開発を進めているのがロールスロイス社(英国)です。自律無人船舶において、質の高いオペレーションシステムを提供することを目指しています。

R&D拠点として魅力的なフィンランド

フィンランド政府は、海運産業の国際競争力向上においても、輸送システムのIoT化を促進デしています。企業や研究機関の研究開発に対してファンディングを行っているフィンランド技術庁(Tekes)は、ロールスロイス社などのグローバル企業からスタートアップ企業を含む産業界、研究開発機関、政府機関の連携で、船舶無人運航システムに向けた技術開発を進めるプロジェクトの支援を行っています4

ロールスロイス社は、MUNINのプロジェクトにも参加し、船舶無人運航システムに関する予備調査の結果を示しています。一方で、船舶無人運航システムの陸の運用の制御拠点である技術開発センターをフィンランドのトゥルクに今年2017年にオープンする予定です。ここに拠点を構える理由として、ロールスロイス社のIiro Lindborg GMは、設備投資を低く抑えることができ、ヘルシンキにも近いこと、高度人材の確保が可能なこと(トップエキスパートが存在)、アプリケーションの開発基盤をあることを挙げています。

ロールスロイス社では、船舶無人運航システムには、「認知」を重要な課題と捉え、カメラ、マシンナリー、安全/ハザードの検知に関する開発を進めています。このような開発には、様々な企業や研究機関の連携が必要であり、ロールスロイス社は、Tekes が支援するイノベーションのエコシステムを形成する手法なども導入し、協力関係、シェアリングを促進し、2020年~2035年のロードマップに向けて進めています。

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船舶無人運航に向け開始したプロジェクト(出典:Tekesのホームページ )

さて、船舶無人運航システムには、法的な整備も求められます。フィンランド運輸局は、船舶無人運航システムにおける船の動きや状況を海員に知らせ、安全で効率的な航路をナビゲートすることができる洋上テストを2017年から2年間行うことにしています6。このようなテスト環境が整備されていることは船舶無人運航の実現に向け、重要なことです。フィンランドでは、政府省庁が連携して迅速に物事を進めることを推進しており、TekesのPiia Moilanenプログラムマネージャーは「船舶無人運航の実現は、フィンランドの主要課題であるが、国際的な研究機関、企業、行政機関との連携によって成長していくことを私たちは確信している。」と話しています。

 このようにチャレンジングなプロジェクトに関しても、開発基盤を整えるとともに、エコシステムの形成までサポートし、さらに政府省庁を超えて、規制に関しても試行できる状況を提供するフィンランドの取組は、未来社会の構築に貢献していくと思われます。

謝辞

本記事作成において、フィンランドTekes のPiia Moilanenプログラムマネージャー、ロールスロイス社のIiro Lindborg GM、Markus Laurine プロジェクトマネージャー、国立研究開発法人海洋研究開発機構海洋工学センター海洋基幹技術研究部の吉田弘部長にご教示いただきましたことに御礼申し上げます。

参考

1 Slushのホームページ

  http://www.slush.org/

2 MUNIN – Maritime Unmanned Navigation through Intelligence in Networks 

  http://www.unmanned-ship.org/munin/

3 DARPA ,ACTUV Unmanned Vessel Helps TALONS Take Flight in Successful Joint Test

  http://www.darpa.mil/news-events/2016-10-24 

4 フィンランド大使館,フィンランドで自動運航船のビジネス・エコシステムが始動,2016.

  http://www.finland.or.jp/public/default.aspx?contentid=352357&nodeid=41206&culture=ja-JP

5 Rolls-Royce, “Rolls-Royce announces investment in Research & Development for Ship Intelligence”, 2017.

  https://www.rolls-royce.com/media/press-releases/yr-2017/08-03-2017-rr-announces-investment-in-research.aspx

6 Ministry of Transport and Communications of Finland, “Testing of intelligent fairways, scheduled to begin next year”, 2016.

  https://www.lvm.fi/en/-/testing-of-intelligent-fairways-scheduled-to-begin-next-year

これまでの科学技術予測調査における関連トピック

 

 


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