Knowledge Integration through Detecting Signals by Assessing/Scanning the Horizon for Innovation

情報社会を支える“乱数”

乱数は統計や情報技術の中でも基礎的で重要な要素です.宝くじの当選番号算出はもとより,近年急速に浸透するインターネットを通じた暗号通信における初期値,機械学習等を含む計算機上での学習過程一般など,「乱数」が求められる場面は多岐にわたります.

“よい乱数”生成の難しさ

一方で,計算機上で周期性などのパタンを有しない「よい乱数」を生成することは容易ではありません.そもそも計算機上で乱数を算出する以上,そこには一定の計算手続が存在することになるため,一見ランダムに数を生成しているように見えても何らかのパタンが存在してしまうことになり,真の乱数にはなり得ません.つまり理論上,計算機では「擬似乱数」しか算出できません.そこで、真の乱数と極めて近い乱数を生成することが重要な課題となります.このとき,生成した擬似乱数が真の乱数とどれだけ近いか(乱数らしさ)を評価する手法が乱数検定です.

“乱数らしさ”の評価方法

擬似乱数を評価する軸のひとつに系列としてのパタンがないことが挙げられます.系列としてのパタンとは,たとえば一定周期で同じ数列が繰り返される,ある周期で特定の数が出現する確率が高い,といったような周期的構造が存在することを意味します.この周期性に関する評価手法に離散フーリエ変換テスト」(DFTテスト)があります.ただし,このDFTテストは評価に際し,「完全な乱数列の存在」という仮定を置く必要があり,その検証が困難であるため近似的にしか評価できないという問題を含んでいました.

この問題に対して,これまでにも複数の修正案が提案されていましたが,これに関連して,京都大学のチームが問題となっていた「仮定」を置かずに擬似乱数の良さを評価するための新しい手法を開発し,問題を完全に解決したと発表しています.

今後の展開

既に述べたとおり,乱数は情報社会のあらゆる場面で重要となる要素であり,擬似乱数の生成・評価は社会的にも大きな意味を持つものです.上述した乱数検定を開発した京都大学の発表者らも現行の標準暗号(AES: Advanced Encryption Standard)に変わる次世代標準暗号の策定を初め,さまざまな暗号評価・乱数検定への直接的な応用を期待しています.

精度の高い評価手法を用いることで,擬似乱数を正しく評価することができれば,いわゆる人工知能である機械学習や自然言語処理などの分野でも大きな効果が見込まれます.データや計算資源そのものの物量では優位性を保つことが困難な我が国において,国際的なプレゼンスや貢献など今後の展望が特に期待される分野のひとつです.

 

情報源(参考文献やURLなど)

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