Knowledge Integration through Detecting Signals by Assessing/Scanning the Horizon for Innovation

市民科学(シチズンサイエンス)とは

ICTの急速な発展に伴い研究情報のオープン化とアクセス性が向上したことを背景に、研究者や研究機関との繋がりを持って多くの一般市民がデータの収集や分析に参加する、新しい市民科学(クラウドサイエンスとも呼ばれます)が広がりを見せています。

市民科学には、研究活動への貢献のほか、科学への関心の涵養、科学コミュニケーション促進、実践的な科学教育、社会的課題への対応など様々な効果が期待されています。近年、各国の政府機関がこうした効果に着目し、市民科学を加速させるための基盤作りを進めています。

専門家と市民科学者とを繋ぐ基盤-ドイツ

ドイツ連邦教育研究省(BMBF)では、2014年にGEWISS(市民による知識創造)プログラムを立ち上げ、市民科学の支援を開始しました。運営を担うのは、研究所、大学、博物館などの関連機関から成るコンソーシアムです。活動の柱は、能力向上とプラットフォーム構築です。能力向上のためには、対話型ワークショップなどのイベント開催や実践ガイド作成などが行われています。また、オンラインプラットフォームを設け、プロジェクトやイベントの実施情報や、参加者間のネットワーキング・情報交換の場を提供しています。

2016年8月には、市民が主体となる研究プロジェクトを助成することを発表しました。期間は2017年から2019年までの3年間、助成総額は400万ユーロです。GEWISSでの議論を踏まえて策定された「市民科学戦略2020」(2016年5月)の中で助成策拡充の必要性が述べられており、これに対応するものと言えます。

省庁による実践の促進-米国

2015年9月、ホルドレン大統領科学技術補佐官から各省庁長官に宛に覚書「市民科学とクラウドソーシングを通じた社会的・科学的課題への取組」が発出されました。そこでは、市民科学の価値として、科学的・社会的課題に取り組むことによる科学技術イノベーションの加速、市民と省庁ミッションとの結び付け、実践的な科学・工学・数学教育の効果などが挙げられています。そして、こうした価値を最大限引き出すべく、市民科学推進のため、コーディネーターの配置とプロジェクトカタログ作成を求めました。

大統領府科学技術政策局(OSTP)は、省庁の活動を支援するため、ツールキット、ケーススタディ(ベストプラクティス)、プロジェクトカタログを掲載するプラットフォームを構築しています。

また、行政管理予算局(OMB)の覚書「2017年度の科学技術優先課題」では、イノベーションの手段の一つとして市民科学の推進が挙げられています。また、「クラウドソーシングとシチズンサイエンス」の項は、、議会の政府アカウンタビリティー局(GAO)の「オープンイノベーション」レポート(2016年)や新しい競争力強化法(2017年1月)のセクション402にも掲げられています。政府機関として市民科学に可能性を見出し、有効活用しようという姿勢がうかがえます。

図:米国政府による市民科学プロジェクトのカタログサイト


出典

  1. GEWISS (BürGEr schaffen WISSen): http://www.buergerschaffenwissen.de/en
  2. Memorandum to the Heads of Executive Departments and Agencies: “Addressing Societal and Scientific Challenges through Citizen Science and Crowdsourcing”:, September 30, 2015: https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/holdren_citizen_science_memo_092915_0.pdf
  3. citizenscience.gov: https://www.citizenscience.gov/
  4. GAO, OPEN INNOVATION -Practices to Engage Citizens and Effectively Implement Federal Initiatives: http://www.gao.gov/products/GAO-17-14
  5. American Innovation and Competitiveness Act: https://www.congress.gov/bill/114th-congress/senate-bill/3084/text?q=%7B%22search%22%3A%5B%22S.+3084%22%5D%7D&resultIndex=1


参考

  • 林和弘、オープンサイエンスをめぐる新しい潮流(その5)オープンな情報流通が促進するシチズンサイエンス(市民科学)の可能性、科学技術動向 2015年6月号: http://hdl.handle.net/11035/3097

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