Knowledge Integration through Detecting Signals by Assessing/Scanning the Horizon for Innovation

研究助成団体と研究成果の公開

従来の研究助成団体は、助成対象の研究について報告書の提出は義務づけていますが、多くの研究者は別途論文を執筆して学術ジャーナルに投稿し、その成果をもって次の研究費ないしは昇進につなげています。研究者コミュニティごとに長く受け入れられている学術ジャーナルが存在し、その論文が主張する研究の内容は、査読(ピアレビュー)によってその質が担保されており、一定の質が保証された論文発表が研究を発展させる最も重要な手順であると認識されています。この学術ジャーナルを利用した研究成果公開の仕組みは、査読や出版に時間がかかること、あるいは価格高騰化などの問題を現在抱えています。

非政府系研究助成団体の試み

英国の非政府系研究助成団体であるウェルカム財団(Wellcome Trust)は2016年11月に、オープンアクセス(OA)オンラインジャーナル“Wellcome Open Research”を立ち上げ、これまで学術ジャーナルが担ってきた助成対象の研究論文の公開も自身が持つサーバーで開始しました。1) “Wellcome Open Research”では、まず、投稿された論文やデータセットを即時にオープンに公開します。その後に査読を行い、質の保証がされた論文は二次情報データベースなど外部データベースなどにインデックスされ、既存の学術ジャーナルの論文と同じように流通します。こうすることで、一定の質を担保しつつ迅速かつコストを抑えた公開ができるとしています。2)

米国の非政府系研究助成団体であるゲイツ財団(Gates and Merinda Foundation)3)でも2017年3月に、"Gates Open Research"を2017年後半に立ち上げると発表しました。4)"Gates Open Research"でも、前述の"Wellcome Open Research"をモデルとし、同財団の助成研究対象の論文およびデータの出版の加速を目指します。

誰が研究成果公開を担うのか

この非政府系の研究助成団体が自身で出版プラットフォームを持つ動きは、政府系の研究助成にも影響を与え始めています。例えば、欧州委員会(EC)においてHorizon2020助成研究対象について同様の出版プラットフォームの構築を検討していることが、2017年3月にベルリンで開催されたオープンサイエンス会議において表明されました。

研究助成団体の方針が研究者の行動に大きく影響を与えることは、これまでのオープンアクセスの義務化の過程などで判明しています。5) 非政府系の研究助成団体が先導して出版プラットフォームを用意し、既存の学術情報流通システム以上に質も保障された迅速・安価な流通システムを構築できる可能性を示したことで、既存の学術情報流通システムに一石を投じたことになります。

一方、研究者には、前述の通り、もともと自分の研究成果を出版し、次の研究費や昇進につなげたい学術ジャーナルを想定していることが多いのも現実です。この非政府系研究助成団体の方針と取り組みが広く研究者に受け入れられるかどうかに注目が集まります。



参照文献

1) http://www.stm-publishing.com/wellcome-open-resear...

2) http://www.gatesfoundation.org/

3) https://wellcomeopenresearch.org/

4) http://doi.org/10.1038/nature.2017.21700

5) https://www.nii.ac.jp/sparc/event/2009/pdf/6/doc_D...



コメント欄を読み込み中